†「まるマ」パロディ小説・4(ユーヴォル)†



◇ バスタイム・ランデブー ◇


       これはユーリとヴォルフラムが初めて一緒にお風呂に入った
      時のエピソードである。
       「ど、どこを見てるんだよ、ヴォルフ!」
       ユーリは相方の視線に気付き抗議した。
       魔王専用の浴室で、湯船に浸 (つ)かろうとしたユーリは、今ま
      で腰に巻いていたタオルを取り去ったのだが、どうもヴォルフ
      ラムの視線がそこ、下半身の中心に注 (そそ)がれているようだっ
      たからだ。
       「何を恥ずかしがっているんだユーリ? 男なら誰もが持っ
      ている一物 (いちもつ)だろう」
       そうは言うものの、ヴォルフラムは珍しいモノでも見るよう
      に、好奇心に満ちた瞳でユーリの下半身を見ているのだ。
       「本当にそう思うのか!? だったら、俺のなんか見ないで
      自分のを見てればいいだろう? それともまさか、俺のと自分
      のを比べてンのか!?」
       ユーリはヴォルフラムのあからさまな視線に耐えきれず、慌
      ててタオルを腰に巻き直す。
       「ユーリ、今さら隠しても遅いぞ。ぼくはこの目で しかと
      見届けたのだからな。安心するがいい、この事はぼくの胸の内
      に仕舞 (しま)っておいてやる」
       ヴォルフラムは広い浴槽の中で、得意の反っくり返りポーズ
      をしていた。
       いかにも『感謝するがいい』と言わんばかりの態度である。
       「ちょっと待てヴォルフ! そ、それって俺の‥‥俺の息子
      が小さいと言う意味なのか!? だから黙っててやる、って言
      ってんの!? 言っとくけど、俺のは日本男児として平均並み
      だぞ? だいたい、ヴォルフだって俺のとそう大差ないんじゃ
      ないのか!?」
       まぁ、お前は実兄のグウェンダルとかコンラッドのを見慣れ
      ているから、他の奴のが小さく見えるのかもしれないけど‥‥
      と、ユーリは心の中で付け加えた。
       一方、高貴な血筋の元王子殿下はユーリのセリフに激怒して
      いた。
       「ユーリ! ぼくがそんな淫らな事を考えていたと思ってい
      るのか!? ぼくはおまえのアンダー○アが黒かったから、ユ
      ーリは『双黒』ではなく、実は『トリプルブラック』だったの
      かと思っただけだ! もし双黒 以上のトリプルだという事が
      人間どもに知れ渡れば、おまえは更に命を狙われるぞ! だか
      らそれを みんなには内緒にしてやると言ったんだ! ぼくの
      思いやりに感謝するんだな!」
       ヴォルフラムは本気で言ってるようだった。
       なんだ、俺の息子の事じゃなかったのね、とユーリは気を落
      ちつける。
       『けど普通、頭部の髪の色と下半身のアンダーヘ○が同じ色
      なのは常識だよなァ。髪を染色している奴は別としてだけど。
      双黒を薬にしたいと狙ってる人間だって、その事は分かってる
      だろうし‥‥』
       ユーリはヴォルフラムの、その幼稚園児並みの知識に疑問を
      抱いた。
       「まさかヴォルフ、大人になってから誰かと一緒に風呂へ入
      った事が無いとか?」
       「‥‥‥‥‥今、こうしてユーリと入っているが?」
       「だからそうじゃなくて、今まで友達やグウェンダルと一緒
      に風呂に入った事が あるかどうかを訊いてるんだけど」
       「何を言うユーリ! 貴族たる者、一人で風呂にも入れぬと
      あっては領民に笑われるではないか! ぼくは子供の頃フォン
      ビーレフェルトの叔父上にそう諭 (さと)されて以来、誰とも一緒
      に風呂に入った事はないぞ! こうしてユーリと入っているの
      は、ユーリがぼくの婚約者で、おまえに誘われたからだ」
       またもやヴォルフラムは真面目 (まじめ)に答えていた。
       本人に自覚はないが、子供の頃のヴォルフラムは超甘えん坊
      で、忙しいコンラートやグウェンダルが一緒でなければ風呂に
      入らないとゴネた事があるのだ。
       それを見兼ねたヴォルフラムの父方の叔父、フォンビーレフ
      ェルト卿は、三男に貴族のなんたるかを説 (と)き、一人で風呂
      へ入れるように教育したのだった。
       しかし‥‥‥‥‥、
       『叔父さんに感謝だ!』
       と、ユーリは思った。
       入浴中のヴォルフラムの艶 (なまめ)かしさは、服を着ている時
      の数百倍だったからだ。
       それでなくとも天使のような美少年なのに、ヴォルフラムの
      透き通るような白磁器の肌は、お湯の熱で ほんのりピンク色
      をしており、少年独特の瑞々 (みずみず)しい艶 (つや)を放っている。
       その気がある者は勿論、その気が無かった者でさえ、その気
      にさせてしまう神秘的な美しさなのだ。
       もし今までにヴォルフラムが他の男と一緒に風呂に入ってい
      たとしたら、絶対無事では済まなかっただろうとユーリは思っ
      た。
       「‥‥‥しかし、叔父上には内緒だが、実の所、一人で風呂
      に入っていた訳ではないのだが‥‥‥‥」
       「ええっっ!? それってどう言う事だよヴォルフ!?」
       ヴォルフラムの言葉に、ユーリは焦 (あせ)る。 
       「一体、誰と入ってたんだ!?」
       「気になるか?」
       「そ、そりゃ公認婚約者としてはだな、一応‥‥‥‥‥」
       言葉尻は濁しているけれど、珍しくユーリの口から公認婚約
      者という言葉を聞けたヴォルフラムは嬉しそうだった。
       クスリと笑うと、ユーリに黄色い物体を見せる。
       「ぼくの お風呂の友はこいつだ」
       ヴォルフラムが掲 (かか)げて見せたのは、バスグッズの黄色い
      アヒルちゃんだった。
       「ええっ!? アヒルちゃん〜〜〜!?」
       「そうだ。前にも見た事があるだろう?」
       「そりゃあ、見たけど、これがヴォルフの風呂友達だったな
      んて‥‥‥‥」
       ユーリはカクリと肩を落とす。
       『心配した俺がバカみたいだ‥‥‥』
       しかしユーリの心中とは別に、ヴォルフラムの方は御機嫌だ
      った。
       ザバッ、と湯船から上がると、美しい裸体を隠そうともせず、
      ユーリに近寄って来る。
       「これ以上 湯に浸 (つ)かっていては、逆上 (のぼ)せてしまう。
      ぼくはもう上がるから、ユーリも早く湯船に浸かって温まると
      いい」
       そう言ってユーリの横を通り過ぎようとしたのだが、ユーリ
      は擦れ違い様、ヴォルフラムを後ろから抱き締めた。
       『おれなんか、とっくにヴォルフの白い裸体に のぼせちゃ
      ってるよ‥‥‥‥』
       言葉には出さなかったけれど、ユーリの気持ちはヴォルフラ
      ムに届いたに違いなかった。
       今まで熱い湯に浸かっていたヴォルフラムの体温がユーリに
      も伝わり、ユーリは身も心も蕩 (とろ)けてしまいそうだった。 
       『このまま溶け合い、そして一つになれたら‥‥‥‥』
       その想いはユーリの想いなのか、それともヴォルフラムの想
      いなのか、最早どちらの想いか分からないほど、既に二人の気
      持ちは触れ合った身体 以上に重なり合っていた。
       しばらくの間、二人はそのままでいたが、やがてユーリの方
      から腕を解く。
       本当はもっとずっと、ヴォルフラムを抱き締めていたかった
      けれど。
       「このままじゃ風邪をひいちゃうだろ。早くタオルで身体を
      拭 (ふ)いた方がいいよ‥‥‥」
       ユーリの気遣 (きづか)いに、ヴォルフラムはクルリと向き直ると
       「いや、ぼくも もう一度 湯船で温まり直そう。アヒルと
      一緒に入るのは今日で最後だからな」
      そう言って、アヒルと共に また湯船に浸かってしまう。
       「アヒルと最後って‥‥、どうして? 好きなんだろアヒル
      ちゃん?」
       未だ腰にタオルを巻いたまま浴室のタイルの上にいるユーリ
      の疑問に、ヴォルフラムは湯船の中から手招きをする。
       「ユーリも早く入れ。これからはアヒルでは無く、ユーリが
      ぼくと一緒にお風呂に入ってくれるんだろう?」
       そう問うヴォルフラムの可愛らしさは鼻血ものであったが、
      取り敢えずユーリは言われた通りに腰からタオルを取って湯船
      に入った。
       ヴォルフラムが一緒に浸かっているせいか、今日は何となく
      お湯がキラキラ輝いて見える。
       「‥‥‥なぁヴォルフ、俺がいないとこでは他の奴と一緒に
      風呂へ入るのはヤメテくれないか? そのォ‥‥一人じゃ危な
      いし‥‥‥。あ、勿論、逆に大勢人がいる温泉やプールなら構
      わないけど」
       「‥‥‥‥いいだろう。そのかわりユーリ、おまえもぼくと
      約束しろ。ぼく以外の誰かと風呂に入る時は、必ず下半身を隠
      すと」
       「は? そりゃあ自慢して見せたいモノじゃないけど、また
      なんで? まさか焼き餅ですか?」
       「違う。忘れたのか? さっきも言っただろう。ユーリこそ
      トリプルブラックがバレたら命の危険が増すんだぞ。いいな、
      絶対に下半身を見せてはダメだぞ」
       「だ、だからそれは、大人なら みんな分かってる事だと…」
       「いっその事、下半身の方だけ染色すると言う手もあるな…」
       「おいヴォルフ、聞いてる?」
       「いやしかし、これだけの美しい高貴な黒を染めるのは、や
      はり忍びないか‥‥‥」
       ユーリの言葉なんか聞いちゃいないヴォルフラムは、グルグ
      ルと考えを巡らせているようだ。
       『だめだ‥‥。王子様にはもう少し身体の構造について最初
      から詳しく説明しないと納得してくれそうにないや‥‥』と、
      ユーリは溜め息をつく。
       けれども話す時間ならこれから たっぷり有るのだ。
       なぜならこの先も、ユーリとヴォルフラムは二人でお風呂に
      入り、湯船に浸かりながら互いの事を相談しあったり、様々な
      事を語り合うに違いないのだから。
       しかもここは魔王専用の浴室なのだから、無粋 (ぶすい)な邪魔
      者は入れない。
       ここが第27代魔王陛下とその婚約者の、二人だけの とって
      おきな場所になる事は間違いなさそうだった。
       ――――――――――うら若い女官はこう証言する。
       『長い時は陛下のGショックとやらで2時間以上も、お二人
      で浴室に篭 (こも)ってらっしゃるんです。一体、何をなさって
      おいでなのかしら? 寝室がおありなのに‥‥‥』    



                               終



      ついにWeb上で下ネタもどきをやってしまいました‥‥‥。
      しかも やおい系ではなく、お下品系だったかもデス(^^;)
      今の所 Web上では純愛路線で行くつもりなのですが、場合
      によってはWebでも やおい路線へ進路変更するかもしれま
      せん。 





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