†「まるマ」パロディ小説 7(ユーヴォル)†



◇ 魔王陛下の憂鬱 ◇



        今日で通算 (つうさん)何日になるだろうか‥‥‥。
        栄 (は)えある眞魔国の第27代魔王陛下は自らのベッドに横たわ
       りながら大きな溜め息をついた。
        「これって一種の拷問だよな‥‥」
        ユーリの左隣りで安らかな眠りについているのは外見・天使
       フォンビーレフェルト卿ヴィルフラムだ。
        ヴォルフラムはユーリの苦悩など知らず、顔にうっすらと笑
       みさえ浮かべて安らかな眠りについている。
        きっとかなり良い夢を見ているのだろう。
        時々『‥‥にゃんだユーリ‥‥そんなにくっつかれては馬の
       手綱 (たづな)を操 (あやつ)れニャいだろう‥‥‥』とか『ユーリが泣
       いて止めても ぼくは一旦 (いったん)領地に戻らなきゃならない用
       があるジャリ‥‥』などと可愛い寝言 (ねごと)を口ずさんでいる。
        そんなヴォルフラムをユーリはチラリと見やると、恨めしげ
       に呟 (つぶや)いた。
        「‥‥ったく、こっちは毎晩夜も眠れず睡眠不足だってのに、
       ヴォルフは幸せそうだよ」
        ユーリは ここ連日、毎晩 己 (おのれ)の本能と戦い悶々 (もんもん)
       した日々を過ごしているのだ。
        部屋の主であるユーリの許しも無く勝手にベッドへ入り込み、
       自分を抱き枕にしてくるヴォルフラムの行動に、正直言って困
       っている。
        青少年ならぬ性少年と言える年代のユーリにとって、ヴォル
       フラムの行動は拷問のようなものだ。
        「こうも天使の寝顔をされてちゃ逆に手を出せないって事を
       分かってるのかな‥‥‥」
        ユーリがそう呟いた時、いきなりヴォルフラムが叫んだ。
        『何をするんだユーリ!』
        そう寝言で叫ぶと今度は両腕で"ガシッ"っとユーリの身体を
       挟 (はさ)み込み、ヴォルフラムは自分の身体をピッタリとユーリ
       に くっつけて来たのだ。
        毎夜 ヴォルフラムに抱き枕にされているユーリではあるが、
       こんなにもヴォルフラムと密着状態なのは初めてだった。
        布ごしとは言え、重なり合った部分からヴォルフラムの呼吸
       や心臓の音がユーリにも伝わる。
        規則正しく脈打つ潮騒 (しおさい)のようなヴォルフラムの鼓動
        (こどう)に、いつしかユーリの鼓動もヴォルフラムに合わせ、同じ
       リズムで脈打っていた。 
        「なんか‥‥俺達って二人で一人みたいだよな‥‥‥」
        ユーリがそう呟 (つぶや)いた時、更にヴォルフラムが足を
       絡 (から)めて来たのだった。
        「うわっ!! ちょ、ちょっとヴォルフ! それはマズイ
       って!!」
        ユーリは慌ててヴォルフラムから身体を離そうとする。
        けれども、しっかりと絡 (から)め取られ固定されたヴォルフ
       ラムの足は、ユーリの太腿 (ふともも)から離れてはくれない。
        それ所かヴォルフラムは己自身の腰までユーリの腰に密着
       させて来たのだ。
        当然、ユーリの腰にヴォルフラムの分身が当たる。
        「わっ、わっ、わっ! ナニが当たってるんですがっ!!」
        ヴォルフラムが眠っている為、取り敢 (あ)えずソレは硬さを
       帯びてはいないが、それでもソレがヴォルフラムの分身であ
       る事実に変わりはない。
        ユーリは湯殿で見た事のあるヴォルフラムの息子を つい
       脳裏に思い浮かべてしまう。
        淡い金色の繁 (しげ)みの中で、ほんのり色付いた桜色の花芯と
       二つの宝珠‥‥‥。
        何度それに触れたいと思ったことだろう‥‥‥。
        その花芯と宝珠が今、ユーリの手の届く所にあるのだ。
        そう認識した途端 (とたん)、ユーリは自分のモノが熱くなって
       いる事に気付く。
        この世で最も愛しい者が手の届く距離にいるのだ。
        男として冷静でいられる訳がない。
        「‥‥‥っく! ‥‥‥だめだ‥‥熱くて‥‥苦しくて
       ‥‥どうしたらいいか分からない位ヴォルフが好きなんだ
       ‥‥‥。‥‥だから‥‥いいよな‥‥?」
        ユーリはヴォルフラムの分身に手を伸ばしかけた。
        と、その時、またもやヴォルフラムが寝言を言う。
        『‥‥いやだ、ユーリ‥‥。ぼくはもう少しだけ時間が欲
       しいのに‥‥‥‥』
        そのセリフにユーリはドキリ☆とする。まるでユーリの
       行動を見透 (みす)かしているかのようなヴォルフラムの寝言は、
       瞬時にユーリの理性を甦 (よみがえ)らせた。
        「俺ってば何をやってるんだ!!」
        慌てて伸ばしかけた手を引っ込めると、ユーリは大きく息
       を吐き出す。
        「危なかった‥‥‥」
        理性を取り戻したとは言え、それでもまだユーリの下半身
       だけは熱を持ち、熱くたぎっている。
        どこかヴォルフラムのいない所で熱を冷まさないと、いつ
       またヴォルフラムを襲いそうになるかユーリ自身にも分から
       ない。
        そしてユーリはヴォルフラムを起こさないように気遣いな
       がら、絡まったヴォルフラムの腕や足から抜け出したのであ
       る。
        「‥‥ごめんヴォルフ。俺、今夜はここで一緒に眠る自信
       無いんだ。その代わり明日は朝一でヴォルフに笑顔を見せる
       から、だから今夜は許して欲しいんだ‥‥‥」
        ユーリは ゆっくり静かにベッドから抜け出すと、扉に向か
       って歩き出す。
        そして扉に手をかけると、一度だけ眠っているヴォルフラ
       ムを振り返る。
        「おやすみ、俺のヴォルフ‥‥‥」
        そう声をかけてから、魔王陛下は自分の部屋を後にしたの
       だった。


                 ◇  ◇  ◇ 


        翌日。
        ユーリは低血圧のヴォルフラムが起きるより前に、何とか
       朝のロードワークを終え、魔王の居室へ戻って来ていた。  
        「おはよ、ヴォルフ! そろそろ起きて朝飯にしないか?
       俺、もう腹ペコペコでさ!」
        寝起きの悪いヴォルフラムが寝ているベッドへ近付き、声
       を掛けると、ヴォルフラムがユーリの声に反応する。
        「‥‥‥ん〜〜〜ン‥‥。ぼくはまだ眠いジャリ‥‥‥」
        「ほらヴォルフ! 朝はきちんと起きて ちゃんと朝食を
       摂らないと、いざって時に力が出ないよ」
        ユーリが再度ヴォルフラムに声を掛けると、王子様は よう
       やく片目を開ける。
        「‥‥夢の中のおまえは もっと優しく起こしてくれたぞ」
        「そりゃあ、夢だからだろ?」
        「‥‥‥夢と同じ起こし方なら起きてもいいが‥‥‥」
        王子様でありながら寝汚 (いぎたな)い わがままプーは、何の
       かんのと理由をつけて起きる様子がない。
        一方、ユーリの方はお腹が すいてたまらないので、仕方
       なくヴォルフラムの要望通りにするしかないと諦 (あきら)める。
        「じゃあ夢の通り起こしてやるからさ、どんな起こし方
       だったのか言ってみろよヴォルフ」
        「‥‥‥そうだな、まずユーリがぼくの頬にキスをする
       んだ。するとぼくが『何をするんだユーリ!』と言うから、
       ユーリはぼくを抱き締めて『朝だぞヴォルフ。俺達は二人
       で一人なんだから起きてくれないと寂しいだろ』とぼくに
       お願いした」
        「‥‥‥‥えーと、それって‥‥」
        ユーリは 何とな〜く昨夜の事を思い出す。
        しかしユーリの戸惑いなんか気付いちゃいないヴォルフ
       ラムは、どんどん話を続ける。
        「だが、ぼくはまだ眠いので『いやだユーリ、もう少し
       だけ時間をくれないか』と言うと、ユーリは『仕方ないな、
       分かったよ。もう少しおやすみ、俺のヴォルフ』と言って
       ぼくを起こさずに そのまま寝かせておいてくれたんだ。
       どうだユーリ? 夢の中のお前は ぼくに対する思いやり
       に満ちていると思わないか? だから今も、ぼくを思いや
       って当然、昼まで寝かせてくれるのだろうな?」
        そう言うとヴォルフラムはゴロンと反対側に向きを変え
       二度寝の態勢に入ってしまう。
        どうやら初めから起きる気は さらさら無いようだ。
        「あ、あのヴォルフ‥‥?」
        ユーリの方はヴォルフラムの話を聞いて夕べの事を思い
       出し、少しばかりバツが悪いので控 (ひか)え目に尋ねる。
        「‥‥‥‥まさかとは思うけど、昨夜は起きてたんじゃ
       ないよな?」
        「‥‥‥‥‥」
        ユーリの質問に対する返事はない。
        代わりに すーすーと言う可愛らしい寝息が聞こえて来
       るだけだ。
        本当に眠ってしまったのか、それとも狸寝入りなのか、
       そして昨夜の件も起きていたのか、本当に夢の話なのか、
       ユーリには判断しかねるのだった。
        それでも夕べヴォルフラムへ言った事は守りたかった
       ので、ユーリは わがままプーが目覚めるであろう時間に
       は、笑顔で起こしてあげるつもりだった。
        「仕方ないな、じゃあ昼頃になったら起こしてやるよ」
        勿論 返事は無いが、スースーと言う寝息から、いつの
       まにかグピピ〜と言うイビキに変わっていた。 
        ユーリはヴォルフラムの幸せな眠りを守る為なら、自分
       がどんなに辛くても もう暫 (しばら)くは下半身の苦しみに
       耐えられるような気がしてくる。
        『ヴォルフが居てくれるから、俺はいつも笑顔でいら
       れるんだ』
        そう思えるから、だから魔王陛下は苦しみさえも笑顔
       に変えて、愛しい婚約者と共に未来を歩いて行きたいと
       心の底から思うのだ。
        そしてその思いは終生変わる事はなく、笑顔の絶えな
       い家族であったと後世に語り継がれている‥‥‥‥。



                               終





      今回は『どこまで』書こうか迷いましたが、取り敢えず理性で
      健全にしました(笑) でもいつかヴォルフの為に正式な結婚
      まで書いてあげたいデス‥‥。 その内、COMICでヴォルフを動
      かすかもしれません。(時間が無ければ未定のままかもデス)





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